「また失敗した」「もっとちゃんとやらなきゃ」
そんな言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
人から褒められても「たまたまだよ」と心の奥で打ち消す。完璧でない自分が許せず、小さなミスでさえ長く引きずってしまう。
もしかすると、あなたも今、このような毎日に疲れ切っていませんか?
私はかつて、まさに同じように生きていました。
本当の気持ちを押し殺し、周囲の期待に応えることだけを優先する。やがて息苦しさは増し、「お酒だけが自分を解放してくれる」という思い込みに絡め取られ、アルコール依存症に陥りました。
でも、そこから少しずつ、私は自分を責める人生から抜け出せるようになったのです。そのカギとなったのが――自己肯定感でした。
自己肯定感とは「無条件のOKサイン」
自己肯定感とは、「自分を無条件で肯定する力」です。
ここで大切なのは“無条件”という部分。成績が良いから、仕事ができるから、人に好かれるから――そんな条件があるわけではなく、何も成し遂げていなくても「私は私でいい」と思える感覚です。
これは、生まれ持った要素と、育つ過程の両方から影響を受けます。幼いころに両親から無償の愛情を受け取ると、自然と「自分には価値がある」という感覚が根づきます。しかし、大人になってからでも、その感覚を育て直すことは可能です。
私たちが忘れがちなのは、自己肯定感には「根拠」がいらないということです。自信とは違い、証拠や成果を積み上げなくても成立します。むしろ、「根拠がないのに自分を認められる」状態こそが、心の安定をもたらします。
「条件付きの自分」を演じる苦しさ
自己肯定感が低いと、人は“条件付きの自分”を演じてしまいます。
完璧主義もその一つ。「不完全な自分は許せない」という感覚が根底にあり、ほんの少しの失敗も他人から責められるきっかけになると恐れます。だから、理想像を作り、その姿でなければ価値がないと信じてしまうのです。
私も長い間、この「偽りの自分」で生きてきました。
周囲の目を気にして本音を隠し、笑顔の裏では息苦しさが募っていく。それはつまり、「ありのままの自分を否定していた」ということです。
もしあなたが今、「自分を演じている感覚」があるなら、それは自己肯定感が傷ついているサインかもしれません。
回復の入口 ― 自分を認める小さな行動
自己肯定感を高めるための特別な魔法はありません。
でも、その第一歩はとてもシンプルです。
言いたいことを、少しだけ言ってみる
本当はやりたいことを、小さく試してみる
自分の心の声を静かに聞いてみる
自分に優しい言葉をかけてみる
私の場合、自助会で自分の本音を人前で話せたことが大きな転機でした。恥ずかしくて隠していた部分を口にした瞬間、「それでもいいんだ」と感じられたのです。その時、胸の奥で長く固まっていた氷が少しずつ溶けていくような感覚がありました。
大事なのは、「今すぐ完璧に自分を愛そう」と力むことではなく、「少しずつ、息苦しさが減っていけばそれでいい」と思うことです。
次回は、「なぜ私たちは自己肯定感を失ってしまうのか」という背景を深く掘り下げます。そこを理解すると、自分の中で繰り返される自己否定のパターンが見え、回復の道筋がよりはっきりと見えてきます。
- 今日のまとめ
- 自己肯定感は「無条件で自分を肯定する力」
- 偽りの自分を演じることは息苦しさを生む
- 小さな行動から、自分を認める感覚は育つ
- 完璧な愛し方より、「少しずつ」でOK
(第2回へ続く)