(第4回より)
自分を責める声が聞こえてきた時、意識的に「優しい声」をかけてあげる。
慣れないうちは効果を疑うかもしれませんが、このことによりあなたの価値観が劇的に変わる可能性があります。
しかし、まずは「自分を責めていること自体に気づかない」可能性を考慮する必要があります。
これは思った以上に根深い問題で、自己否定が当たり前になりすぎていて、自分で自分を傷つけていることに気づけないわけです。
第5回は、無意識に行われている自己否定に気づき、その連鎖を断ち切るための知恵を考えたいと思います。
あなたを傷つけているのは「あなた自身」かもしれない
自分を傷つける行為と聞くと、多くの人は「自分はなんてダメなんだ」と声に出して自分を罵るような、分かりやすい自己批判を思い浮かべるかもしれません。
しかし、自己肯定感を静かに、しかし確実に蝕んでいくのは、もっと日常に潜む、些細な行為です。
自分の感情を無視すること
- 自分の「やりたい」という気持ちを押し殺すこと
- 自分の感情を無視すること
心当たりはありませんか?
例えば、「本当は疲れているのに、頼み事を断れずに無理をしてしまう」「本当は挑戦してみたいことがあるのに、『どうせ無理だ』と最初から諦めてしまう」。
こうした一つ一つの選択は、あなたの心に「あなたの感情や願いは、どうでもいいものだ」というメッセージを送り込み、自分自身への信頼を少しずつ削っていきます。
これが、「無意識の自己否定」の正体です。
「変えよう」としなくていい。「気づく」だけで心は変わり始める
「では、今日から嫌なことは全て断り、やりたいことだけをやればいいのか?」
いいえ、そういうわけではありません。
そんなことを急にやろうとすれば、罪悪感や恐怖で、かえって苦しくなってしまいます。
ここで大切なのは、無理に行動を「変えよう」とするのではなく、まず、自分が自分に対してそのような扱いをしている、という事実に「気づく」ことです。
「ああ、今、自分は本当は嫌だと感じているのに、我慢しようとしているな」
「本当はこうしたい、という気持ちを、今、押し殺そうとしているな」
ただ、それに気づくだけでいいのです。
なぜなら、私たちの心は、自分の本当の姿に光が当たれば、自然と健全な方向へ変わっていこうとする性質を持っているからです。
自分自身が感情や行動に気づかないということは、自分自身を無視していることです。
それはとても不自然なことなんです。
だから自然になりましょうということです。
「自分の自分に対する態度」に気づくこと。それ自体が、変化の始まりなのです
「心の観察日誌」をつけてみる
これは、自分を傷つける「無意識のクセ」に気づくための、非常にシンプルで効果的な練習です。
1日の終わりに、たった3分でいいので、今日一日を振り返って、以下の問いに心の中で答えてみてください。紙に書く必要もありません。
- 今日、本当は「嫌だ」と感じたのに、我慢してしまったことはあったかな?
- 今日、本当は「こうしたい」と思ったのに、諦めてしまったことはあったかな?
- その時、心や体はどんな感じがしたかな?(例:胸が苦しい、胃が重いなど)
ここでの目的は、我慢した自分や諦めた自分を責めることではありません。
「ああ、我慢したんだな」「諦めたんだな」「その時、心はこんな風に感じていたんだな」と、ただ、気づいてあげること。
まとめ―「気づき」が、自己肯定感の土壌を育てる
本当の変化は、自分を無理やり変えようとすることからではなく、今の自分をありのままに知ることから始まります。
自分がいかに無意識に自分の感情を無視し、自分を抑圧しているかに気づくこと。
その「気づき」こそが、自己肯定感という、これから豊かな実りをもたらすための土壌を、静かに、しかし確実に耕していきます。
このように、自分の内側を深く知ることで、自己肯定感は内側から育ち始めます。
では、この「内側から育った自己肯定感」は、依存症という問題に対して、なぜそれほどまでに強力な予防策となるのでしょうか。
次回はその核心に迫りたいと思います。
(最終回へ)